ニューフェース ETNで広がる小口の国際分散投資機会、東証に一挙上場 - 注目の投信 - 投資信託 - QUICK MoneyLife 投資信託・株式投資の資産運用応援サイト | 株式市況 | 株価
ETNは裏付け資産が無い点で、ETFと似て非なる金融商品。ETN発行体が日々の時価償還を保証。ボラティリティや国際商品指数を1口、4千円〜7千円程度で売買が可能。
英大手金融グループのバークレイズが発行するETN(Exchange Traded Note、指標連動証券)が東証に新規上場する。8月23日に2本、9月6日に7本上場する運びだ。9本とも、iPathというブランド名で、ロンドン証券取引所とフランクフルト証券取引所に上場している米ドル建てETNが東証に重複上場する形となり(注1)、東証では同じETNの円換算値を売買する。全国の証券会社で上場株同様に売買でき、9本とも信用取引による売り買いも可能になっている。
「バークレイズ iPath ETN」のサイト: http://www.ipath.jp
(注1)ETNの海外との重複上場
ETNは基本的に債券だが、債券の形態のままだと国内では株式とは税制が異なる金融商品の扱いになる。税制を上場株と同じくするうえで、海外で上場しているETNの原証券を信託銀行が受けとり、それと等価なJDR(Japan Depositary Receipt、日本型預託証券=信託受益証券)を信託銀行が発行し、東証ではJDRを売買する制度を採用。ちょうど、国内株をADR(預託証券)の形に変えて、米国証券取引所に上場するのと同じような仕組みになる。今回のiPath ETNの信託銀行は、三菱UFJ信託銀行と日本マスタートラスト信託銀行。
売買単位は1口。8月12日時点のETN時価は円換算で1口あたり4千円前後から7千円弱となっており、少額の小口資金で、グローバル経済の状況を映し出す世界の金融市場にアクセスする機会が広がる。税制は上場株や株式投信と同じ扱いとなり、特定口座の利用も可能だ。ETN自体には配当金や利息収入が付かないので分配金は出ない。信託報酬に相当する運用管理費用は年1%未満。
ETNは指数連動という点ではETFと同じだが、ETFと異なり裏付け資産を持たない。裏付け資産は無くてもETNの発行体が、指数に連動したETNの時価での償還(換金)を保証する仕組みが指数連動性を確保する。ETNは金融機関が発行する債券であり、リンク債とも呼ばれる。このため、発行体が経営破綻するとETNの時価償還ができなくなる債務不履行(デフォルト)の可能性があり、ETNには債券同様に発行体の信用リスクがつきまとう。この発行体の信用リスクはETNのみならず、ブラジル株価指数連動型ETFの「ボベスパ(1325) 」(野村アセットマネジメント)など、リンク債に投資するETFにも共通する。ETNは債券なので満期償還日がある。1本(ボラティリティ関連)は2019年で、他(コモディティ関連)は2040年。ETFと同様に満期前の繰り上げ償還リスクはある。
東証上場「バークレイズiPath ETN」の信用リスクの目安として、大手格付け機関の信用格付けが参考になる。米大手格付け機関のS&P社(スタンダード・アンド・プアーズ)の格付けは現在「AA−」であり、S&P社が「AA+」に格下げした米国債の信用格付けと同じレベル(ダブルA格)だ。
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ETNの時価は償還価格(償還価額)として、日々、東証の適時開示情報閲覧サービス(TDnet)で開示される。この償還価格が、ETFや投信の基準価額に相当する理論価格であり、毎日午後に円換算値が公表される。ETNの償還価格は、指数値から運用管理費用(年率)を日割りで差し引いた額で、その円換算値は、前日の米ドルベースの償還価格に当日午前中の対米ドル円相場(三菱東京UFJ銀行の対顧客電信売買相場の仲値)を掛け合わせた値となる。
ETNの時価と連動指数値との乖離幅は、実質的に運用管理費用に限定される。このため、指数連動性が極めて高い。ETNは、外国人投資家に対する規制や税制などの関係で現物株投資が難しい新興国株指数、商品先物などのように限月切り替えの継続が必要となるような先物指数へ連動するのに適した金融商品と言える。
ただ、いくらETNの指数連動性が高くても、東証ではETNの理論価格で売買できる訳ではなく、あくまで市場参加者の需給関係で変動する市場価格を売買する。ETFと同様に、市場価格が理論価格と乖離するのは避けられない。なお、ETNの時価の水準が指数値の円換算値に一致するのではなく、お互いの変動率が連動する。ETN当初発行時の価格がその時の指数値に一致せず、当初発行価格を1口=50米ドルなどに定めていることによる。この点はETFと同じだ。
ETFの売買価格(売りと買い気配)を東証で中心的に提示する証券会社を指定参加者(マーケット・メーカー)と呼ぶが、iPath ETNのマーケット・メーカーは現在のところ、バークレイズ・キャピタル証券の1社が務める。
東証のETNの上場基準や上場廃止基準は明確に定められている。上場基準には、例えば、ETNの発行総額は発行体の純資産の25%以内、などの条件がある。バークレイズ社のETN発行総額は80億米ドル超(2011年7月末時点)に達しているが、バークレイズ社の純資産額は約6.3兆円(2010年末時点)あり、ETN発行総額を優に上回っている。ETNの理論価格と連動指数の相関係数(1年間)が0.9未満になると上場廃止になるので、かなり高い指数連動性の持続が要求される。
ボラティリティ連動指数はVIXとは異なる値動き。ボラティリティの大きな特性は平均回帰現象。ボラティリティのボラティリティ(価格変動リスク)は大きくハイリスク。
※以下、連動指数はすべて米ドルベース。ETNやETFはその円換算値に連動。
iPath ETNの一本、ボラティリティ関連で8月上場の「iVIX中(2029) 」は、米CBOE(シカゴ・オプション取引所)が算出するVIX(ボラティリティ・インデックス)に関連する"S&P500 VIX中期先物指数"(以下、中期先物)に連動する。これに対し、2010年12月に上場した大証ETFの「VIX短期(1552) 」(国際投信投資顧問)は"S&P500 VIX短期先物指数"(以下、短期先物)に連動。連動指数名の"中期"と"短期"は、VIXと連動指数の値動きの違いを理解するうえで、重要な意味を持つ。
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VIXは、米国株式市場を代表する平均株価指数"S&P500指数"について、S&P500オプションの売買参加者が予測する、S&P500の1ヵ月先までの最大変動率を平均指数化したものだが、VIX自体はあくまで指標値に過ぎず、金融商品として取引できない。ただし、VIXの先物がCBOEに上場されており、S&P社の中期先物と短期先物は、VIXではなくVIX先物の価格変動を指数化している。中期先物は1ヵ月刻みで満期が9限月あるVIX先物のうち、中期(4限月から7限月)の4本で構成。短期先物は短期(1限月と2限月)の2本で構成している。
VIXの先物価格は先物市場参加者のVIX将来予想に基づく需給関係により価格形成されるため、VIX指数値とは異なる。さらに先物特有の、先物価格の限月間格差という期近と期先の価格差が指数値に大きく影響する。S&P社のVIX先物指数では、その構成限月を毎日、期近から期先へ一定割合で乗り換えるようにしている。この時、期先価格安(バックワーディング、逆ざや)の場合は指数に対しプラス要因、反対に期先高(コンタンゴ、順ざや)の場合は指数のマイナス要因になる。こうした、限月毎に異なる先物価格の状況が中期先物と短期先物、VIXの値動きの違いとなって現れる。
※以下の騰落率や価格変動リスクはすべて米ドルベース。
今回のiPath ETNの大半は2010年2月にフランクフルト証券取引所に上場。2010年2月末以降、過去1年半の動き(8月12日時点)をみると、VIXが86.5%上昇したのに対し、短期先物は67.5%下落、中期先物は20%下落など、中期先物と短期先物、VIXはそれぞれ値動きが異なる。8月に入ってから12日までの2週間ではVIXの44%上昇に対し、短期先物は44.6%上昇、中期先物の上昇率は15.3%だった。
中期先物と短期先物のボラティリティ(価格変動リスク)も異なり、中期先物は短期先物に比べ小さく、値動きがなだらかだ。ただし、中期先物の価格変動リスクの大きさは日経平均の2倍以上あり、長期保有には適さないハイリスクの金融商品となる。
VIXおよび中期指数、短期指数ともに米国株式市場や日経平均の値動きとは強い逆相関を示すのが特徴だ。株式市場の急落時に跳ね上がるので、VIXは別名、恐怖指数とも呼ばれ、投資家の不安心理を反映する。ただ、跳ね上がった後にバブル的に上昇し続けたことはこれまでに無く、平均的な水準(20%程度)をめがけて切り下がるのが一般的な特性だ。反対に下げ続けることもなく、何かのきっかけで突如として急騰することがある。このように、ボラティリティは平均回帰的な特性(Mean Reversion)を持つ。VIXの算出方法やS&P社先物指数との差異の背景などについては、「大証ETF、VIX短期先物指数」の解説を参照。
商品指数間の連動性(相関係数)は低めで、一定の分散投資効果が見込まれる。
ボラティリティとコモディティETNの連動対象はいずれもS&P社が先物価格をベースに算出する指数で、すべて"トータル・リターン"という名称が付いている。先物価格をベースに計算する指数値を"エクセス・リターン"と呼ぶが、指数で先物を買い建てる際の証拠金に対して付く金利(米国3ヵ月短期国債利回り)がエクセス・リターンに日々上乗せとなる。つまり「トータル・リターン=エクセス・リターン+金利」の関係になる。
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コモディティの国際商品指数(S&P GSCI)はゴールドマン・サックス社が開発した商品先物指数をS&P社が指数の権利を引き継いで算出している。各商品の過去5年(データが揃うまで2年程度遡った年を最新とする5年間)の世界での平均生産高や先物市場の流動性(出来高)を考慮し、指数に含める商品品目や構成比率を決定している。指数では、原則的に最も取引が活況な直近限月の先物を中心に組み入れるようにし、満期が訪れるごとに次の期近への乗り換え(限月切り替え)を反復する。
"S&P GSCI商品指数"(以下、GSCI商品)がその代表格で、現在24品目で構成されている。8月に上場する「i商品(2021) 」はGSCI商品に連動。GSCI商品のサブインデックスに連動し、9月に上場する「iエネルギー(2024) 」「iアグリ(2025) 」「iメタル(2023) 」「i畜産物(2028) 」「i貴金属 (2022) 」の5本を配分比率に従って組み合わせたものと、「i商品(2021) 」は等価だ。「iアグリ(2025) 」は「i穀物(2026) 」と「iソフト(2027) 」で構成する。国内での新たな商品投資対象としては、砂糖、綿、コーヒーなどで構成する「iソフト(2027) 」や牛肉や豚肉の国際商品価格で決まる「i畜産物(2028) 」が登場する。「iソフト(2027) 」連動指数のGSCIソフト・コモディティの価格変動リスクは日経平均に比べ大きく、「i畜産物(2028) 」連動指数のGSCI畜産物は日経平均に比べ価格変動リスクが小さかった。「iエネルギー(2024) 」では原油の比重が高く、天然ガスの比重が低いのも特徴の一つ。
GSCI商品は、他の国際商品指数"ダウ・ジョーンズUBSコモディティ・インデックス(DJ−UBS商品指数)"や、東証ETFの「EASY商品(1327) 」(BNPパリバ)が連動する"S&P GSCI商品指数キャップド・コモディティ35/20 トータル・リターン指数"に比べ、エネルギー関連の比重が高いのが特徴となる。
ただ、GSCI商品のサブインデックス間の連動性(相関係数)をみると、GSCI商品とGSCIエネルギーの連動性がかなり高い以外、概ね低めだ。その結果、GSCI商品の価格変動リスクは日経平均より少し大きな程度に収まっている。コモディティETNは、価格変動リスクを抑えながらより高いリターンを目指す国際分散投資に一定の効果があると言えそうだ。
GSCI商品など、国際商品指数に連動する投信の国内での運用実績は短くはない。例えば、野村アセットマネジメントが2005年9月に設定した「野村コモディティ投信」はDJ−UBS商品指数に連動し、2007年10月設定の「野村コモティティ投信2」はGSCI商品指数に連動する(どちらも税込み信託報酬は年1.3125%、信託財産留保額は0.5%)、などがある。「商品ETF(1684) 」など、DJ−UBS商品指数やそのサブインデックスに連動するETFセキュリティーズのETF(注2)も東証に上場している。
(注2)ETFセキュリティーズのETFは、国内税制上、外国投資法人債券という扱いで総合課税の対象となり、特定口座が利用できず、売買を取り扱っていない証券会社がある。
8月は、欧州の債務危機と米国のデフォルト(債務不履行)の可能性に加え、米S&P社によるトリプルA格からの米国信用格下げ、米国の景気後退(リセッション)懸念など、悪材料が畳みかけるように押し寄せ、世界の金融市場が大混乱。原油が急落する一方でドルへの信認低下から代替通貨としての金が買われ、金価格が騰勢を強めた。そうした傾向がGSCIエネルギーの下落とGSCI貴金属の上昇に鮮明に現れている。
ボラティリティや国際商品市場は、中国のインフレ圧力を象徴する豚肉価格の大幅上昇や米国の景気後退(リセッション)入りを意識した原油の急落など、先進国や新興国のグローバル経済の動向、天候、自然現象、政情などによって、目まぐるしく変動する。どういった金融商品が今後有望か不調に終わるかを見通すのは困難だ。そうした点で、小口資金で国際分散投資が可能になるETNの利便性は高い。
米国ではiPath ETN市場価格と理論価格の乖離は小さい。日々、ETNの設定と償還が可能な点を反映。成り行き注文には注意。
ETNの市場価格と理論価格(または指数値)との間の乖離は、市場での需給関係により避けられない。ただ、米国のニューヨーク証券取引所に上場しているiPath ETNの終値と指数値の乖離を調べると総じて小さいことが分かる。例えば、米国では「VIX短期先物連動ETN(VXX)」と「VIX中期先物連動ETN(VXZ)」が2009年1月末から先行上場している。この両ETNについて、8月12日までの市場終値と指数値の1ヵ月間(20日間)騰落率を過去に遡り毎日計測し、その差(乖離幅)を集計してみた(指数値の出所はiPath米国サイト)。
そうすると、中期先物の1ヵ月騰落率の乖離幅は平均が0.4%、短期先物は平均0.7%程度だった。乖離幅が最大となったのは2010年5月のギリシャ債務危機時を挟む1ヵ月で各4.1%と7.3%。総じて、市場価格と指数との乖離幅は小さい。この背景には「iPath ETNは一定口数以上で毎日、設定と償還(時価換金)が可能」(バークレイズ・キャピタル証券・インベスター・ソリューション本部長マネージング・ディレクターの石橋泰寛氏)というETNの仕組みが関係しているとみられるが、東証上場ETNの乖離状況がどう推移するか、注目される。また、リーマンショック後にバークレイズの信用格付けが格下げになったが、米国のiPath ETNの市場価格には格下げの影響はほとんどみられなかったようだ。これも「ETN理論価格での日々の時価償還を保証している」(石橋氏)ことによるようだ。
ETNに限らず、ETFにも共通するが、成り行き注文は思わぬ値段で約定してしまう危険性がある点には注意したい。特に、前場開始前、後場開始前や、売買が閑散として最良気配(売り気配の最安値と買い気配の最高値)の間の値幅差(スプレッド)が広く開いている状況で、成り行き注文を出すと理論価格から大きく乖離した値段で約定してしまう可能性がある。成り行き注文は売買約定の機動性や自由度が高い。その一方で、高速取引システムの東証アローヘッド導入後、個人投資家の成り行き注文が不利になる傾向が強まったとの声もある。売買の機動性よりも指数連動性を重視する場合には、売りと買い気配およびその数量を一覧表示する"板"の状況を確認しながらの指値注文が有効とみられる。
執筆:QBR 高瀬 浩(掲載日:2011年08月22日)
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